蓮の実をかたどった柘植で作られた根付です。
実の部分はコロコロと動く粋な作りになっています。
こちらの作品は江戸時代に作られたものです。

柘植は表面が非常にきめ細かく、塗装などを施さなくても非常に肌触りが良いという特徴を持っています。
また使い込むほどに艶と味が出る材質で、使い込むほどに新品にはない重厚さと風格がでます。
ご紹介の作品も柘植ならではの質感と、長い年月を経たからこその艶が深い味を醸し出しています。

動く実の部分はコンディションなどから黒檀(エボニー)でできていると思われます。黒檀は江戸時代に唐木三銘木の一つとして日本に入ってきましたが、世界中の極々一部の地域でしか育たず生育が遅いので現在も輸出制限がある高価な木の代表格です。
江戸時代から黒檀の根付はあったようですが、あまりにも堅く扱いにくい材木だったので根付としての作品は少なくしかも細かな細工の根付はかなり少なかったと言われています。大変希少な素材なのです。
蓮は江戸時代に中国から日本へ伝わり、蓮の花を眺めながら飲食を楽しんだりする方々もいたそうで何とも上品な趣を感じます。
根付と言う小さな世界に鑑賞の美を反映させる、根付師の感受性には感服します。
蓮の実の脈や花床の細やかな凹凸まで非常に繊細に仕上げられています。
動くたびに実の艶やかさが生きる、センスと芸術性が高い洗練された逸品です。

